●書名:プロ野球通になれる本 好プレー・珍プレーに見る人間ドラマ
●著者:近藤唯之
●版元:PHP研究所(PHP文庫)
●出版:96年12月
●定価:600円
●評価:400円以下なら
「1988年3月にネスコより刊行された『プロ野球ジーンとくる話』を大幅に加筆・補修したもの」だそうです。
近藤氏は報知新聞→東京新聞→夕刊フジの記者です。プロ野球以外の作品を見たことはありません。20数年前は新潮文庫からオレンジ色の背表紙で5~6冊出ていました。当時は文庫で読める野球ものは珍しかったので、ほとんど揃えたはずですが、今では1冊も手元に残っていません。
近藤氏の著作の中では、比較的(もっとも?)私好みと言えるでしょう。いつもは鼻につく「近藤節」があまり気になりません。アマゾンをチェックすると、¥1~210ですが、さすがに1円は失礼というものです。私は古本屋から105円で買っています。その程度の価値は十分にあります。お釣りが来ます。1円なら間違いなく「買い」です。送料を気にしなくて済むときに、ついでに買っておいても損はありません。
戦前を含めて有名・無名の選手の細かいエピソードが満載ですが、近藤氏とは明大の先輩となる桝嘉一(ます・かいち)という戦前の選手について、次のように記載されています。
桝は翌大正15年2月下旬、明治へ来てみると入学試験は3日前に終わっていた。仕方がない。桝は東京・駒沢にある明大合宿に岡田を訪ねた。すると岡田はいうのだ。「浪人ということで、合宿の2階に住んでろや」 ところで、同年10月4日、東長崎球場で明立決勝戦が行われた。不思議なことには浪人の桝が明治のユニホームを着て明治のベンチにいた。岡田監督が「見つからないから入ってしまえ」と入れたのである。そして6回二死後、小林達郎三塁手(松本商)の代打で登場、片田宜道投手(立教中)から中前安打、打点1をかせいだ。学校に籍のない“居候”が公式戦に出場したのも、東京六大学史上、桝が第1号である。 (43ページ)近藤氏の著作を読むときに、とくに注意しなければならないのは、この部分の結びの「第1号である」とか、「…史上、1人しかいない」という記述です。本当にそうかもしれませんし、そうではないかもしれません。「第1号」だと断定的に書いてあっても、「第1号かもしれない」と読まなければならないのです。近藤氏が知る範囲での「第1号」にすぎないからです。
東京六大学が始まったのは1925(大正14)年の秋ですから、桝が“デビュー”した1926年10月4日より前の試合と言っても、その数はたかがしれています。せいぜい80試合前後でしょう。近藤氏がこの80試合に出場した全選手の学籍の有無を調べたうえで、「第1号」と呼んでいるとは限りません。
大正15年当時の明大合宿所が駒沢にあったというのも眉唾ものです。明治大学野球部のWebサイト(明治大学野球部史>創生記と大正時代)によれば、駒沢(三軒茶屋付近)にグラウンドを移したのは昭和5年であり、同時にライト側入口に合宿所を建設しているようです。大正15年の時点では駒沢の合宿所はまだなかったのではないかと思われます。近藤氏の記述にはこのような杜撰な部分が多々あることを肝に銘じるべきです。
ところで、06年秋の北東北リーグ1部・2部入れ替え戦では、「沼田」投手をメンバー表に「沼上」と書き間違えたことによって没収試合となりました。「登録外選手」の試合出場と判断されたからです。桝のように、学籍すらない選手の試合出場を没収試合とするのは理解の範囲内ですが、たかが名前の書き間違いを大げさに取り上げて没収試合などという裁定を下すのは大バカ者です。「登録外選手」の出場が厳しく処断されるのは、桝のような歴史が(ほかにも)あるからです。結果的に、大昔につくられた規定の字句を拡大解釈すると、名前の書き間違いが没収試合になってしまうのです。
1 コメント:
-----
アマゾンをチェックすると、¥1~210ですが、さすがに1円は失礼というものです。私は古本屋から105円で買っています。その程度の価値は十分にあります。お釣りが来ます。1円なら間違いなく「買い」です。送料を気にしなくて済むときに、ついでに買っておいても損はありません。
-----
このくだりについて、次のようなメールを頂戴しました。
-----
書庫・東雲の上記エントリで、この本の価値として、アマゾンでの¥1は失礼と書かれておりますが、私は¥1にしているのは出品されてる古書店等の良心だと思っています。
古書などを出品しているアマゾン-マーケットプレイスでは1冊につき送料¥340がかかります。つまり¥1の古書を10冊買えば本の値段は¥10ですが送料は¥3400かかります。つまり1円の本は実質¥341(送料込み)という事になります。¥1の意味はそういう事だと思います。同じ古書店で複数冊買う場合は送料を割引してくれる古書店さんもあります。
これら送料は、アマゾンで¥1500以上購入している場合でも、関係なく適用、加算されます。
-----
送料・手数料が一律340円になっているとは知りませんでした。これに気づいたのは、まだ最近のことです。
http://set333.blogspot.com/2007/10/blog-post_23.html
ご指摘ありがとうございました。
コメントを投稿