2007年6月13日

奪われぬもの|後藤正治

●書名:奪われぬもの
●著者:後藤正治
●版元:講談社文庫
●出版:02年12月(単行本=97年01月、文芸春秋)
●定価:939円(税込)
●評価:定価相応

私はブックオフから420円で買っていますが、Timebook Townでは税込367円ですし(文庫版)、アマゾンでは税込258円から出ています(単行本)。400~500円でも十分「買い」ではないかと思われます。私の中では後藤氏はダブルAクラスのライターです。

「蘇るロード」でマラソンの有森裕子、「伝説への旅」で競馬の福永洋一、「窪んだマウンド」で野球の福間納、「ラガー」でラグビーの林敏之、「遠いバンク」で競輪の中川茂一、「リング」でボクシングの高橋直人が描かれています。私が貼った付箋は、有森から順に、8枚、6枚、13枚、6枚、2枚、2枚でした。1984年の福間については、いつか「セットポジション」で取り上げたいと考えています。

神戸製鋼が初優勝した1989年のラグビー社会人選手権決勝の対東芝府中戦を、たぶん私はTV観戦しているはずですが、次のシーンの記憶はありません。

 表彰式。赤いジャージーを泥まみれにしたフィフティーンは一列に並んだ。表彰状を受け取るのは当然キャプテンの役割である。平尾は林にそれを譲った。「林さん、表彰状をもらってきてください」「ええ? 俺が?」 促されて林は、戸惑い、照れ、そして折れた前歯が見える口もとを緩めて、前へ出た。二十九歳。両膝には何重にもテープが巻かれている。歴戦の勇士への、後輩たちのメッセージだった。 (217ページ)

神鋼(日本代表)の4番林、5番大八木というフォワード第2列は覚えていますが、私はさほど熱心なファンではなく、いまだにラグビーをスタンド観戦したことはありません。基本的には「猫は炬燵で丸くなる」派ですから…。ただ、スポーツニュースで結果のわかっている03年ワールドカップ決勝の録画放送に最後までつきあったくらいですから、TV観戦は嫌いではありません。

大学ラグビー3連覇は林が卒業した直後の同志社大しかありません(82-84年)。同大は林が3年のときも優勝しており、もし林がキャプテンだった1981年に優勝していれば、不滅の5連覇になっていたわけです。81年の同大は優勝した明治大に準決勝で敗れています。どうやら“疑惑のホイッスル”があったようです。著者はラフプレーで退場させられた同大のウイングの選手に話を聞いています。

――真相はどうだったのでしょう?
<略>……あれ以来、高森さん、笛を吹いておられないですよね。僕としては吹いてもらいたかった」
――なぜ?「だって、もしミスジャッジだったとして笛を吹くのをやめたというのなら、いっそう辛くなるじゃないですか……」
 それは、この歳月の間に、繰り返し繰り返し問いかけ、ようやく着地させた答えであるように感じられた。
 (210-211ページ)

実は、私も似たようなことを「セットポジション」に書いているのです。
「オブストラクションと移動ベース」
早すぎた指示をたぶん後悔しているはずの当該審判の心の痛みに、アピールアウトを宣告された走者は気づいてくれるだろうか。

気になったので調べてみました。77年から79年まで筑波大監督だった高森秀蔵レフェリーは、84年に監督に復帰し、途中1年のブランクがあるものの92年まで監督を務めています。退任時は50歳を過ぎていますので、さすがにラグビーのレフェリーは無理でしょう。今は武蔵野大で人間関係学部の教授です。

外部リンク
 筑波大学ラグビー部>TEAM>部の歴史

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