2007年12月2日

野村克也「頭の使い方」|永谷脩

●書名:野村克也「頭の使い方」
●著者:永谷脩
●版元:知的生きかた文庫(三笠書房)
●出版:06年03月第1刷(単行本?=『野村克也「勝利の方程式」』同社)
●定価:579円(税込)
●評価:400円以下なら

奥付の前のページに次のようにあります。

本書は、小社より刊行した『野村克也「勝利の方程式」』を改題、加筆したものです。

何年の出版なのかということは、きわめて重要な書誌情報だと思われるのですが、その記載はありません。だいたい「知的生きかた」の時点で、薄気味の悪さに引いてしまうのは私だけではないでしょう。まあ、程度の知れた「知的」さだということはわかっていますので、普段は素通りするだけで手を出しませんが…。

もちろん、古本屋で買いました。量産ライターのものを新刊で買うわけがありません。永谷氏が書いた野村ものなら、暇つぶしにはなります。一定水準は確保されているはずです。楽天ブックスで調べてみたら、単行本は1997年11月出版ということでしたが、同名の文庫本が1996年05月に出ているようです。そればかりか、文庫では改訂新版が99年06月に出ています。あざとい商売のことを「知的」と言うのかもしれません。

実際には97年シーズンに関する記述が多く、99年以降のタイガース時代の話はあまりありません。おおむね97年11月の単行本がベースになっているものと思われます。

97年は野村監督が最後に優勝したシーズンです。アンチGファンが溜飲を下げたに違いない小早川の開幕戦3連発の年です。開幕戦は先発・ブロスのあとを、わざわざ野中、広田とつないで、最後は左の加藤で締めくくりました。私はラジオ中継を聞いていました。どこまでもイヤミなおっさんだわい、と思いました。

前年8打数1安打の小早川がソロ3発を放ち、一面見出しを確実にしているところで、ご丁寧にテスト生の野中と広田を絡ませたのです。翌日の新聞記事がどうなるかは想像がつきます。野村監督の注文どおりでしょう。ほかに書きようがありませんから…。

「セットポジション」には「後半勝負」というページがあります。97年のS対G7回戦です。逆転タイムリー二塁打を打った古田の三味線?について、次のような記述があります。この場面は2球連続ストレートで、初球は怪しい空振りでした。古田は2球目を打ちました。

 初球、古田はストレートにまったく合っていないかのように空振りをする。若い入来-柳沢のバッテリーは、当然のようにストレートが合わないと勢い込む。古田はバットを短く持ちかえて、同じ球を待つ。
 "空振りをして同じ球を待つ”という初歩的なヤマの張り方だが、ピンチを迎えた若いバッテリーには、それが見える余裕はない。
 一方の古田は、野村監督によれば、"空振りして同じ球を待つ”という読みだけで待っていたのではなかった。
 野村監督は、古田の一打についてこう分析した。
 「前の対戦の時(97年5月7日)に、古田は同じバッテリーからダメ押しの本塁打をレフトに打っている。だから、同じ球がこないだろうと、わざとストレートを投げさせるようにしたのではないか。ところが相手は何も考えないまま、勢い込んで力だけできたから、まんまとこれにはまった。古田が考えた“裏の裏は表”と、“何も考えない表”とが一致しただけなんや」
 (63-64ページ)

一番肝心な記述がありません。古田が5月7日に打ったホームランはストレートだったのでしょうか。だとすれば、入来は初球から同じストレートを投げ込んできたことになります。無防備すぎます。古田の不自然な空振りは戸惑いの産物だったのかもしれません。

一方、5月7日のホームランが何かしらの変化球だったのだとすれば、入来がストレートを2球続けたのは理解できます。もっとも、前回もストレートを打ったと見るほうが、「何も考えない表」という表現がしっくりくるのですが…。

まあ、空振りで同じ球を待つのが「初歩的」かどうかは別にしても、やはり古田クラスの打者でないと、三味線だとは受け取ってもらえないものかもしれません。

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